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芸術戯言 第001回

桑原甲子雄写真展 ライカと東京
場所:東京都写真美術館



 カメラの歴史はそれほど古くない。というよりわりと最近じゃん。1839年にダゲールというオッサンが写真の歴史を歩き出した。世の中的にはそういうことになっているので、そこから考えれば写真の歴史なんて200年も経っていないことになる。たいした伝統もないんだから、もっと気楽に行こうぜ。と、言ってみたりする。

 ライカというカメラ。高価なカメラというぐらいで、とりたててそれ自体に何の思い入れもないが、以前から奴(ライカ)にはその本質以外のところで注目されている何かがある。そんな気がしていていた。

 人が手にするモノには魂が宿りやすい。車やバイク、文房具、歴史の浅いパソコンというモノでさえ、マッキントッシュという魂の宿ったモノが存在するぐらいなのだから、カメラにだって魂が宿る。まして何かを写しとるという行為が、かつて念とは切っても切れない関係にあったのだから、よりしろとしちゃ具合がいい。ちなみに、過去形で書いたのは現代の芸術では念を排除するという試みもされているようなので、一応過去形でひとつよろしくお願いしますって感じ。

 ではなぜライカというよりしろが、宿主[シュクシュ]として人間に魂のあるモノと認められることになったのか。その背景には、奴が起こした革命的な出来事があった。(←こんな書き方はどうだろう?)

 何かによると、ライカは近代写真の扉を開いた。と、いうことになっている。「何か」はなんだか忘れた。そしてそれが現代まで続くカメラの歴史の中でとっても重要なことで、その答えを桑原甲子雄展のフロアレクチャーで聞いてしまった僕は、

「たしかに重要で、すごいことだな。すげぇぜライカ。(でも高いから買わない)」

なんて思ってしまった。

 突然ですが、写真を撮っている人を思い浮かべて欲しい。イメージしなさい。難しく考えることはないです。素直に思い描けばいい。イメージできましたか?次に行っちゃうよ。いちいち説明しませんよ。義務教育やないんやから(←テント)。

 簡単にいうと、あなたが今思い浮かべた写真を撮っている人。その写真の撮り方を生み出したのはライカです。だからライカはすごかったのです。

 たぶんあなたが思い浮かべた人は、ファインダーをのぞいて、被写体にむかって「ハイ、チーズ」なんて声なんかかけちゃったりしている。程度はどうあれだいたいそんな感じなはず。ゼスチャーで写真を撮る人をやれって言われたら、百人中百人が顔の前に指で四角を作ってカシャッっとやる。それぐらい凡庸なイメージ。今じゃあたりまえ過ぎていちいち誰も何も思わないが、これってすごいことらしい。

 ライカ以前のカメラはもっとずっと大きくて、持ち運びも不便きわまるものだった。そんな中、エルンスト・ライツ社は映画用の35ミリフィルムを使用して、コンパクトで機動性に優れたカメラを作った。それがライカ。そしてそれに伴って、それまでのカメラの常識をくつがえすような決定的な出来事が起こる。

 ライカ以前のカメラってのは、今でいう大判や中判カメラのスタイルをしていて、布をかぶってのぞきこんだり、カメラを腰のあたりで構えたりして使用するものだった。そこからライカは顔の前にカメラを持ってきたのだ。つまり、布をかぶっていたり、腰位置のカメラのため、うつむいた姿勢で被写体と決して対峙することの無かったカメラが、このことによって撮影対象と対峙することができるようになったのだ。

 うまく伝わっていない気がする。もう一回。

 ある空間の中で撮影する。それが外であろうと室内であろうとかまわない。その空間の中でライカ以前のカメラってのは、もう一つ小さな空間を作って撮影していた。小さな空間ってのは、布をかぶったり、うつむいたりしていて外界と遮断された状況のこと。それをライカは、小さな空間を作らなくても撮影を可能にしたのだ。だからスナップショットが爆発的に増えて、それまで写真術だったものがどんどん手軽になっていったのだ。

 で、そのライカを使って桑原甲子雄は東京の街を撮っていったのだけど、当時は関東大震災なんかもあって壊滅した東京の復興がめざましかった時代。建物がモダン建築へと変化していき、桑原甲子雄はその様変わりしていく東京の日常をストレートに撮っていった。

 桑原甲子雄の写真は決して芸術的ではないけれど、おそらく芸術的な写真よりも共感を呼ぶだろう。それは戦前戦後を知っている世代をくすぐる東京があるから。小説家・池波正太郎なんかは、路地裏で子供が走る写真を見て、「これは自分だ」といったそうだ。そのぐらい琴線に触れる風景があるってこと。

 桑原甲子雄はアラーキーの出現により、90年代になって再評価が高いが(評価される前の荒木を見出したのも桑原だけど)、あの荒木惟経に影響を与えた・・・とか書いておくとみんな興味を持ってくれるのだろうか。



◎ ダゲール
フランスの画家。銀板写真術の発明者。写真ってのは銀の化学変化で画が出るので、最初の頃は銀の板でやった。こいつと同じ時期、他の奴も写真術を発明しているのだが、画を定着できなかったとかでダゲールの方が一般的らしい。よくわからんが勝手に調べて欲しい。そして、教えて欲しい。

◎ マッキントッシュ
椅子の方ではなく、いわずと知れたアップル社のパソコン。特に初期の筐体デザインは秀逸。新しいものを良しとするパソコン世界では考えられないことだが、古いものでもモノとして付加価値が非常に高い。

◎ フロアレクチャー
学芸員が展示室で細かく説明しながら回ってくれるもの。一度展示を見てから、フロアレクチャーを聞くと新しい発見があっておもしろい。

◎ テント
大阪の芸人。上岡龍太郎の弟子。99がフィーチャーして以来、よく見かけるようになる。若く見えるが、オール巨人をクン付けで呼べる芸暦があるようだ。

◎ ファインダー
撮影者が見るのぞき窓のこと

◎ 被写体
撮られている対象。人、モ

◎ 大判や中判カメラ
普段使うフィルムの倍くらいの幅のロールフィルムを使うカメラがが中判カメラ。ブローニー判とか言ったりする。6×7や6×6など種類がある。大判カメラとは、シノゴ(4×5インチ)のフィルムやエイトバイテン(8×10インチ)のフィルムを使うカメラを指すのだと思う。

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