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芸術戯言 第003回

わたしの家はあなたの家、あなたの家はわたしの家
場所:東京オペラシティアートギャラリー



 新宿区初台東京オペラシティアートギャラリーというのがある。近くにNTTがやっているICCもあるので行ったことがある人もいると思う。・・・いや、ないか?普通美術館なんて行かないもんな。ま、そういう場所があるということで話を進めていく。

 今回(と、いっても半月以上前のことだけど)見てきたのは、『わたしの家はあなたの家、あなたの家はは私の家(MY HOME IS YOURS/YOUR HOME IS MINE)』という巡回展である。横浜でトリエンナーレが行われているせいもあって、各国から芸術なおっさんおばさんがやってきているので、この時期楽しめそうなものが多い。小さなギャラリーでも、そのギャラリーイチ押しの企画をトリエンナーレに合わせて用意しているので、現代の作家を見るにはは今がチャンス!・・・らしい。

 簡単にこの企画の概要を説明すると、携帯電話とかインターネットの出現でコミュニケーションの方法が新しい形を生むようになって来た。そして、そうしたわりと大き目の変化によって「家」というもののあり方も変化してきていると。

 つまり文化的にかけ離れた地域の人間ともコミュケーションをとれるパイプができていて、そのことによって自分の生活にも少なからず変化が生じてきている。そしてそんな中で、生活基盤や自分という存在を成り立たせるための象徴として「家」という存在はどうなのだろう。そういうことをちょっと考えてみようじゃないか、という具合らしい。

 それに加えて、展覧会というのも形が変化してきていて、それまでのすでに存在している芸術品、例えば絵画とか、彫刻とかをかき集めて見せていくようなもの以外にも、インスタレーションのようなその展覧会の場所で構築していくような作品や、観客の参加によって作品を作り上げていくようなものまで出現している状況がある。そこで「家」をテーマにコミュケイトしていこうぜベイビーたち。

 パンフレットの説明書きを読みながら大まかな説明してみたのだが、この文章を展覧会に行く前に読んでいたら行かなかっただろうな、なんて思ってしまった。なんかやな感じがすっごいする文章だ。誰が書いたんだか知らないが、むずがゆいことこの上ない。

 それで肝心の展覧会はというと、上に書いたような文のとおりの作品が多くて、「家」というテーマの割には統一感がなく、散漫。そしてそもそも、おもしろみにかけたものだった。もちろん僕の持つ芸術観と合わなかったせいもあるのだろうが、その時代に生み出される作品は、今に対して訴えてくるものが無ければおもしろくないと思う。今回の企画ではその「今」というものに対して迎合していて何も新しいものは得られなかったように思う。

 作家と観客の、また観客どうしの、そして広い意味でのコミュケーションというものと、現実に広がっていくグローバル(←これにも疑問はあるが)な世界、そして同時にアイデンティティを崩壊させるような薄まっていく世界に、個的な単位を成り立たせる壁としての「家」というものをテーマに選んだことは、結構やりがいもあるし、おもしろそうだ。しかし、作品として、また企画として世に出されたものは、学校でさして親しくも無いもの同士が「友達だよね」と確認しあっているかのようなぬる〜い連帯感しか提示していない。

 そういう状況を踏まえた上で、すっげぇものを期待していたんだが、少なくとも僕の期待には答えてくれなかった。

追記:

 併設されていた[project N]という若手作家をフィーチャーする企画では、北浦信一郎という作家の作品が展示されていた。アイロニカルとかシニカルとか言えばいいのかもしれないが、毒ポップな視線はつややかな絵具とあいまって、とても現代的で日本らしさを感じた。

 省略の仕方が鈴木清順に似ていて見ていて気持ちがよかった。もっとも清順はポップではないけれども。



◎ 新宿区初台
このあたりには西新宿の方にあるオフィス街。マイクロソフトやネットスケープ、アスキーなど最近な感じの企業が集まっている。なので、アメリカのシリコンバレーを真似て渋谷区笹塚や初台のあたりをビットバレーと呼ぶ。語源は渋谷をbitter(苦い、渋い)valley(谷)をビターバレーと英語にして、語呂が悪いので情報の単位、bitに変えてビットバレー。

◎ 東京オペラシティアートギャラリー
(財)東京オペラシティ文化財団がやっているギャラリー。オペラシティビルにはオペラをやったりする場所もある。近くに都庁やICCやコンランショップ(かっちょいいインテリアのお店。もちろん見るだけ)もあるので、金なしデートしたい人にはいいかも。
http://www.tokyooperacity-cf.or.jp
/exhi.html

◎ ICC
NTTインターコミュニケーション・センターの略。NTTが日本の電話事業100周年の記念事業として起こした美術館。テクノロジーを駆使したメディアアートが楽しめる。「アートなんて」という人でも体験型なので大丈夫かも
http://www.ntticc.or.jp/

◎ 横浜でトリエンナーレ
トリエンナーレとはイタリア語で3年に一度の祭典のこと。現代美術の国際展覧会、横浜トリエンナーレが今年からやることに決まった。世界各国からアーティストや観る奴が来る。ちなみにビエンナーレは2年に一度。
http://www.jpf.go.jp/yt2001/

◎ インスタレーション
現代美術では、観ている人を含めたその空間全部がアートだぜベイビーっていうのがある。だから、絵や彫刻なんかもその空間の中でどう展開させるかってことやっていくとインスタレーション作品と言われる。ま、言葉なんてどうでもいいけど。

◎ パンフレット
チラシ。美術館だとこのチラシのデザイン発注なんかも全部学芸員がやっていたりするので、学芸員は大変だ。

◎ 迎合
他人の意向を迎えてこれに合うようにすること。他人の機嫌をとること。

◎ グローバル
世界全体にわたるさま。世界的な。地球規模の。この言葉が頭に付いたほうが正しいことだとする風潮は気にいらない。グローバルであることが社会的な成熟だとするなら、まだ成熟していない国にまでそれを押し付けるのは利己的でウンコたれだと思う。

◎ アイデンティティ
人格における存在証明または同一性。自己の存在証明。

◎ アイロニカル
皮肉。あてこすり。反語。

◎ シニカル
皮肉な態度をとるさま。冷笑的。犬儒的。

◎ 鈴木清順
映画監督。ものすごく大胆で鮮やかな演出方法をとる。基本的にわけわかんない作風。様式化された美しさを見せる。物語を追うような作品ではないので、一般的ではないと思う。でも好きな監督。

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